家族が壊れたとき





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四幕

次の日もまた早朝からヤミ金業者はやってきた。


私は正直何とか切り抜けられると思っていた。


しかし、私の家が切り抜ければ他の兄弟たちが大変になってきてしまう。


こんな時、夫の存在感はまるで無い。


ただ黙って下をうつむくばかりである。





イヤ、でもやっぱりそれで好都合なのだが


下手に口を利いて何を安請け合いするか分からないからである。



世間では妻が口を出す問題ではないのだろうがそんな事を言っている場合ではない







私は0という訳には行かないな・・と思い始めた。



最後の最後で自分の家で負担しても良い数字を頭の中で計算し始めた。






もちろん捨て金だ。



自分が、いつ再発するやもしれない病気をかかえて後悔しない金額



それは50万だった。







早朝から来ていたヤミ金業者にも次第に疲れの色が見え始めてきた。



その日も主人には仕事に出てもらっていた。




何も期待出来ない夫に居てもらう位なら仕事に出て稼いでもらっている方が



よっぽど良いと思ったからである。




こうしてその日の午前中に消費者金融から50万を借り入れに行った。


もちろん強面の男も一緒である。男は消費者金融の中まで着いて来ようとした。




私はヤバイと思った。消費者金融とて限度額一杯に貸し付けたいに違いない。



もし50万以上の金が借りられる事をヤミ金業者が分かってしまったら・・


私は怒ったフリをして



「そんなに張り付いてなくても逃げないからここで待っていてくださいよ。

  
   恥ずかしいじゃないですか。」




そう男に言った。男はすんなりと私の要望を聞き入れた。


私は早々に消費者金融に入り50万を借りて男に渡した。


ヤミ金業者が返済を求めている額は300万。


それに向けて兄弟たちも動いていた。


それぞれにヤミ金業者が張り付いての行動だった。




幸い主人の弟は30万しか借り入れが出来なかったのだ。


一番大変だったのは兄の所であった。



家業を一緒にやっていた手前からかいくつもの保証人になっている。




父も倒れた後遺症から半身に麻痺が残っている状態だ。



母もまた保証人になっていたが年老いた母にはヤミ金業者は目もくれなかった。




兄は逃げる事は出来ない状態だった。有りとあらゆることで金を作らされていた。




カードで旅券を買ってすぐに金券ショップに売り飛ばす。


これもヤミ金業者の入れ知恵だ。



兄は同じくヤミ金業者を知り合いに持つ古くからの友人に金を借りてきた。


その日、何とか300万が用意できた。



最後にヤミ金業者が私に借用書を手渡して


「奥さんこれ破いていいよ。憎たらしいでしょ?」


こう言った私は遠慮なく


「ええ、とっても」と笑みを浮かべながら破いた。




しかし、これが終わりではなく


見えない闇のほんの入り口であったのである。
	
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◆反省と教訓◆

 

倒産

現実、家族全員で保証人になるとすべて共倒れてしまう。

当時私はこれを散々言っていたのだが聞く耳も持ってもらえず入院中の私に内緒で事が起こったり

だから傍についていられない分主人を諭そうとしたが私の疎ましい言葉を受け入れてはくれなかった

これから年老いてゆく両親・・潔く倒産して別の生活援助の形をしてあげればいいじゃん。

保証人を断ることは悪い人じゃないよ。

当時何度も繰り返し主人に伝えた言葉だった。

・・・おそらく今当時のことを振り返って主人に聞いてみたとしてもあっさり「そんなこと言ってたっけ?」

羨ましい位の脳の構造の持ち主だから・・