家族が壊れたとき





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六幕

ある日のこと


その日は一番末の子の誕生日ということもあって夕食は外食で・・


そう計画をしていた。夕方になって銀行にお金を下ろしに行った。


一番上を除いた家族を車の中で待たしていた。 



私はいつも通りにATMを操作した。



しかし、何度やっても



「このカードは取引できません」と表示されてしまう。
 

恥ずかしい話、持ち合わせもなかったため外食するにはお金が必要だった。 
 
 
 
 
私はATM脇に設置されている受話器に手を伸ばした。
 
 
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少々怪訝そうな口調で銀行マンに説明をした。 
 
 
 
 
銀行マンは申し訳なさそうにそのカードを預かり、いったん店舗の中に戻って行った。 
 
 
しばらくすると今度は慎重な面持ちで出てきて私にこう言ったのだった。
 
 
「このカードはご主人様のカードですか?」
 
 
 
「そうですけど何か?」
 
 
 
私は銀行マンに言った。
 
 
 
 
「今日はご本人様は?」
 
 
 
 
 
何なのよ、いったい・・
 
 
 
幸い主人は車の中で子供たちと待っていたので
 
 
私はすぐさま夫の元へ事情を説明しに行った。 
 
 
夫も何なんだよ・・といった表情を浮かべながら銀行へと入って行った。


すると銀行マンは小声で夫に何やら説明を始めたのだった。



私は直感的に差し押さえだと認識した。




夫はまだ状況が飲み込めてない様子であったが


私は一分、一秒でも早くその場から立ち去りたい気持ちで一杯だった。





例の1000万の連帯保証の件での差し押さえだった。 




夫の実家の支払い状況がストップされたために


こちらに火の粉が降りかかってきたのである。





このときの私は非常に無知であったのだろう。




これに関しての請求書が自宅に届いた事は一度もなかった。 



私はなんて汚いやり方なんだろう、


やっぱり世間でもTVでも問題がある業者はこういう手口を使うのか・・


そう思った。 




しかしそうではなかった。



連帯保証人たるものは主債務者と同じ責任があることをこのとき初めて知ったのだ。



おかげで誕生日どころではなくなってしまった。



翌日には取引先の親会社にまで差し押さえの通知が裁判所から届いていたのである。



すぐさま親会社に事情を説明しに出向いて行った。



やはり夫一人で向かうには不安を感じていたので私も同行させてもらった。



さすがにこの時ばかりは夫の控えに回らなければならない。


要領を得ないような説明に苛立ちを感じながらも状況に理解を示してくれた。



それからは弁護士の元へと通う日々が幾日か続いた。
	
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◆反省と教訓◆

一般人で保証人のトラブルについて詳しいという人は多くはないと思うがあまりにも無知だった


当時は預貯金も差し押さえられる財産もなかったから安心していたのかもしれない。


実際に差し押さえの対象になったのは主人名義の口座にたまたま引き出していなかったその月の生活費だった。


何の前触れもなく突然差し押さえる事が合法であるのだから


こういう状況の時には最低限の生活費は手元に置いておくべきだと痛切に思った。



親として子供の誕生日に申し訳ない。後日誕生日の仕切り直しをした。